モデルを前にして“素裸”にされるのは,描き手の方である.
こちらの虚飾を一枚また一枚と剥ぎ取られ,技術や感性,品性,精神性といったものすべてが露呈する.
人体デッサンには,アカデミックなイメージがつきまとう.
しかし,そんな通俗的イメージを越えたところに,とても豊かな果実が画家の収穫を待っている.
画家とモデルが素裸で対峙する空間.そのコラボレーションがどれだけの緊張を孕むかによって,絵の価値は決まる.
かきためた数百枚のデッサンから20点ほどを,都内の老舗ギャラリーで展示した「デッサン」展. DMには上のような文章を書き添えました.
絵画サークル有志の研究会で,デモストとしてかきはじめた人物デッサンでしたが,枚数を重ねるうちに,見本としてではなく,自身のためにかいていることに気づきました.
流行とは程遠い世界ながら,人物デッサンの奥深さをあらためて再発見し,現在では,もうひとつのライフワークとなっています.
[2021.1.2. 木俣 創志]